日刊工業新聞掲載記事 (2007年10月16日付)

<標題>
進む教育改革 文科省プログラム採択校にみる (32)
“自分で考える”学生育成 独自教科書や支援システム

<本文>
【1年次に数学基礎】
 「能動的な学習への移行」を基本構想とした大阪府立大学総合教育研究機構の「大学初年時数学教育の再構築」が、07年度の文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」に採択された。同機構が中心となり、理系学部1年次の学生を対象に数学の基礎教育を実施する。
 「先に答えを求める学生がたくさんいる」と話すのは高橋哲也教授。授業時間外の学習時間の少なさや学力格差の拡大、自学自習が不得意といった問題もアンケートなどを通して分かったそうだ。
 そこで、覚える学習から自分で考える学習ができる学生を育てるため、03年度から準備を開始した。同プログラムで特徴的なのは、独自に作成した教科書や質問受け付け室、教科書に連動させたコンテンツを含むウェブマスマティカを用いた授業支援システム(ウェブマスシステム)など。
 高橋教授らは学生の自習時間の減少や数学の概念理解への問題を受け、研究としては01年度から、ウェブマスマティカを活用した学習教材の開発を始めていた。その後、授業支援システムの開発も行うことで、線形代数・微積分学に対し授業内容のポイントを自習できる「学習ドリル型教材」を作成し、05年度から活用することができた。

【解答を載せない】
一方教科書は、「教員によって使う教材が異なることもあり、学生の達成度に差が生じてしまう問題がある」(高橋教授)という。そこで、数学教員のグループ全体で検討を重ね、各授業の概要と達成目標を定めて線形代数・微積分学の統一教科書を作成した。「多くの教科書では巻末に問題の解答を載せているが、考える力をつけるため、作成した教科書にはなるべく解答を載せないようにした」(同)。

【質問受け付け室】
質問受け付け室は、普段受けている授業の教室付近に設置し、教員が交代で担当することで学生の利便性を向上させた。活用する学生も増えている。また、「統一した教科書を使っているので、教員もすべての学生に対応できる。さらに、さまざまな学生の持つ問題を知る機会ができ、授業の改善にもつながる」(同)という。
この他、入学生の学力把握を目的とした数学の基礎学力試験も実施。今後、質問受け付け室ではTA(ティーチングアシスタント)を活用するなど人員を増やしたり、学生の到達度や習慣、正解に至る過程を把握するなど、検証しながら改善していくことで、教育効果をさらに高めていく考えだ。(大阪・原田千鶴)

実際の記事(pdf)

(*) この記事の著作権は日刊工業新聞に帰属します.
また, この記事の掲載は転載承認を受けたものです (cf. ニュースUP)