初修外国語

category

初修外国語の世界にようこそ!

初修外国語の世界にようこそ!

高等教育推進機構 前機構長 山﨑 正純

大阪府立大学に入学された皆さんの多くは、中学・高校まで英語を唯一の外国語科目として学ばれたことと思います。最近では、海外の中・高校生との交流や語学研修などの制度が学校単位で整備されているところも多く、大学入学までに異文化に触れるチャンスは 飛躍的に増えてきています。英語をコミュニケーション・ツールとして身につけることは、英語圏の文化、歴史や思想を学ぶためにも必須のことであることは改めていうまでもありません。

大学に入学して、初めて学ぶ外国語を初修外国語と呼びます。日本の大学生は既に学修した英語に加えて、中国語やドイツ語、フランス語や朝鮮語などを学ぶことで大学生に相応しい教養を身につけることが明治期に創設された教育制度の伝統です。例えば小説家として知られる太宰治は、現在の高校にあたる旧制中学時代に、外国人教師に激賞される 英作文をいくつも書くことができました。その後、旧制高校(現在の大学学士課程)に入学しドイツ語を初めて学びます。太宰治がこの時どれほど熱心にドイツ語を学んだかは、彼の小説を読めば一目瞭然です。面白いことに、その後の太宰は東京帝国大学に入学しフランス文学を専攻するのですが、文芸評論家小林秀雄や詩人の三好達治などフランス語・フランス文学の教養を身につけた錚々たる先輩たちに囲まれながら、彼らの文学からはそれほど深い影響を受けていません。太宰治の文学作品には旧制高校時代に学んだドイツ語の 世界からの感化を至るところに見出すことができるのです。彼にとって初修外国語であったドイツ語こそが、彼を作家「太宰治」に仕立て上げたのだといえるでしょう。

言語は文化の一部ですが、また同時に言語は文化の入り口でもあります。英語は現在既にグローバル言語の位置を確たるものとしていますから、どんな文化も外部への発信ツールとしては英語を使うのが最も効率的です。例えば映画の字幕を英語で書くことで、世界 中の人々に感銘を与えることができるわけです。ところが、それぞれの文化の固有性を理解すること、つまり文化の入り口の門をくぐるためには、そこで使われている言語を通じてそこに生きる人々の生活の現実を深く理解しなければなりません。この理解があって初めて、外部への発信が意味を持つのです。英語や日本語の字幕では表現しきれない原語のもつ深みは、そこに生活してきた人々の歴史の地層から産みだされる文化の厚みに他なりません。

初修外国語を学ぶことの大切さはまさにここにあります。それは文字通り異文化体験への入り口だといっても間違いではないでしょう。大阪府立大学に入学された皆さんが、異文化への深い理解を基礎として、それを世界へ向けて発信する担い手となるために、本学では 朝鮮語、中国語、ドイツ語、フランス語の4つの初修外国語について海外語学研修を含め様々なカリキュラムを用意し、皆さんの学びを強力に支援していきます。

また学生の皆さんが自主サークルICA at OPU(international Café Association at OPU)というサークルを作り、いろいろな言語カフェが定期的にオープンしています。授業を受けるかたわら、これらの言語カフェを気軽に覗いてみてください。皆さんの前途に異文化への入り口が開かることでしょう。語学の学修は楽しいことばかりではありません。険しい坂道を独りで登り切る粘り強い頑張りが必要です。心が折れそうになった時、同じ道をよじ登ろうとする仲間と一緒に語らうことで目標を再確認することができるはずです。

みなさん、初修外国語の世界にようこそ!