第27回補足:お呼ばれ

この教材は1回1回が独立した話になっています。それはiPodやiTunesでシャッフルモードで聞くことを想定しているからです。第1回から順番通りに聞くのもいいですが、時にはシャッフルして聞くと、新鮮な気分で学習できるのではないかと思います。

各回が独立した内容になっているとはいえ、第1回からお聞きに方は、そこはかとなく話のつながりがあるのにお気づきでしょう。第27回の教材では「昨日どこへ行きましたか」のようなおしゃべりをしていますが、第25回、第26回の続きという風にこの回をとらえると、さしずめこの回はお呼ばれしたうちでのお昼ご飯をいただきながらのおしゃべりということになりますでしょうか。

食事時にかかるような時間に人に会うということは、まずまちがいなく誘った方が食事を出してくれます。外で食事時に会う場合も誘った方がおごります。最近では若い人の間では“AA制”AA zhì(割り勘)もあるようですが、中国では誘った方が“请客”qǐngkè(おごる)のが当然です。「今日は私が誘ったから私のおごり」「じゃあこんどは私がおごるわね」となれば次にまた会う機会ができる、そうやって人間関係は続いていくと中国の人々は考えているのでしょう。それをその場で割り勘にしてしまうと、そこで関係がとぎれてしまうような冷たい感じがするのだと思います。

家に招いた場合も、レストランでおごる場合も、それこそ食べきれないような量の料理が出るのが普通です。それが招いた側、誘った側の礼儀でありメンツですから、料理は残るのが当たり前なのです。

これにまつわる日中間の悲喜劇はあちらこちらですでに書かれていますので、みなさんご存知でしょう。中国側は張り切ってたくさん料理を準備する。日本側は残したら失礼かと思って必死で食べる。中国側は料理が残り少なくなったので、慌てて追加する。日本側はまた必死で食べる……すると中国側は……

逆に言えば、日本側が招待する時にちょうど食べきれるような量を出すと、招待したこちらの気持ちが伝わらないばかりか、相手を軽んじていると誤解されかねません。また日本料理では冷たいものもメインディッシュになりますが、中国ではメインディッシュは必ず温かい料理を出します。冷たい料理は前菜という認識ですので、料理を出す時にはご注意を。

“中国菜”Zhōngguó cài(中国料理)は大皿に盛られて出てきて、それを自分の“筷子”kuàizi(お箸)で取り皿にとります。“公共筷”gōnggòng kuài(取り箸)という単語もあるのですが、実際には常に用意されているものではないようです。
日本ではあまり見かけない習慣として、招いた側が自分のお箸で料理を取って、客の取り皿に入れるというのがあります。気がつくと取ってくれた料理で自分の取り皿がいっぱいになっていたりします。これは主人の客への歓待の気持ちを表しています。盛られたもののうち食べたいものだけ食べればよいのです。でもどうしてもこの習慣になじめないのでしたら、“谢谢,我自己来。”Xièxie, wǒ zìjǐ lái.(ありがとう、じぶんで取りますから)という手もあるでしょう。

お呼ばれにはお酒はつきものです。これもよく言われていることですが、中国で“干杯”gānbēi(乾杯)と言えば、文字通り「杯を飲み干す」ことで、日本のように一口つけて後は置いておく、或いは後でちびちび飲むということはしません。しかし、中国式の“干杯”を続けていると身体が持ちませんし、中国でもお酒は大いに楽しく飲むべきものですが、酔いつぶれて人前で醜態をさらしてしまうことに対しては日本ほど寛容ではないと思います。“干杯”が無理だなと思ったら、“随意”suíyì(好きなだけ)と言ってグラスを挙げましょう。飲み干さずに残すこともありますよという言い方です。などと偉そうに書いていますが、“我不会喝酒。”Wǒ bú huì hē jiǔ.(私はお酒を飲めません=私は下戸です)。
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