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一般論

【クラス分けに関するルール】

(1)
各人は(男、女ともに)あるクラスに割り当てられる。
(2)
各人の所属するクラスは、ある規則にしたがって その両親のクラスから決まる。

【婚姻型に関するルール】

(A)
各人に対応する婚姻型が唯一つ存在。
(B)
各人に対応している婚姻型は各人の性とその両親が 結婚した婚姻型から決まっている。
(C)
すべての男は、母の兄弟の娘と結婚できる。 (「交叉いとこ婚」)

(注:各クラスに対して婚姻型が一つだけ対応するとは限らない)

【観察】


\begin{displaymath}M_1, M_2,\dots,M_n : \qquad n \text{個の婚姻型があるとする} \end{displaymath}

ルール(2)(A)(B)より、

$\forall i$, Mi型の結婚から生まれた息子の婚姻型は一つに決まる。

同様に、

$\forall i$, Mi型の結婚から生まれた娘の婚姻型は一つに決まる。

両親の婚姻型に息子の婚姻型を対応させる対応f

両親の婚姻型に娘の婚姻型を対応させる対応g

関数となる。


\begin{align*}& \{ M_i \} \overset{f}{\longrightarrow}\{ M_i \} \\
& \{ M_i \} \overset{g}{\longrightarrow}\{ M_i \}
\end{align*}

fgは全単射でなければならない。 (そうでないと消滅する婚姻型があったり、何世代か後にだれも結婚できなくなったりする。)

したがって、f, gMiたちを並べ替えるルールに他ならない。 (=Miたちの"置換")

【ルール(C)について】


\begin{displaymath}\text{男Aの母の兄弟の娘Bが結婚できる}
\Longleftrightarrow
\text{Aの婚姻型}=\text{Bの婚姻型} \end{displaymath}


\begin{displaymath}(C) \Longleftrightarrow
\forall i, f(g(M_i)=g(f(M_i)) \end{displaymath}

すなわち、fgは"交換可能"。

p.396の例:

血縁的に{A,B}, {C, D}という2つの集団に完全に分かれている。

(これは好ましくない。)

社会が可約 $\overset{def}{\Longleftrightarrow} $血縁的に交わりのない複数の集団に分解

社会が既約 $\overset{def}{\Longleftrightarrow} $血縁的に交わりのない複数の集団には分解しない

【群論用語による問題整理】

息子、娘の婚姻型決定規則=n個の要素をもつ集合への置換群の作用

交叉いとこ婚の許可=「置換fgの生成する置換群はアーベル群である」

社会が既約=置換群の作用が推移的



Mitsuru Kawazoe
2001-12-11