中国語の電子辞書

清原文代

紙の辞書を買うか、電子辞書を買うか、こんな悩みは一昔前にはなかった贅沢な悩みです。紙の辞書と電子辞書、それぞれ特徴があります。紙の辞書は一覧性に優れ、引くうちにいろんな知識を増やすことができます。電子辞書の便利な点は携帯性に優れること、検索が容易なこと、そして音声が聞けることです。私自身も場面や用途で使い分けています。じっくり読みたい時は紙の辞書ですし、出先などでさっと調べたい時やワイルドカード検索など紙の辞書ではできない検索方法を使いたい時は電子辞書を使ってます。

このページでは電子辞書について紹介します。現在中日辞典と日中辞典を搭載した電子辞書が下記の4つのメーカーから発売されています。中日・日中辞典の他に、英和・和英・国語辞典なども搭載しています。どんな辞書が載っているかは機種によって違いますので、各機種の製品情報で確かめてください。たとえ同じ辞書を搭載していても、検索画面のインターフェイスや操作方法は機種によってかなり異なります。また最近の電子辞書はユーザーがパソコンを使って用意した音声(MP3)やテキストファイルを読み込めるものも出てきていますが、これも機種によって機能に相違があります。一度店頭で手にとって、そしてよく説明を聞いてから選ぶことをお勧めします。

(注)2009年度の新モデルについては、一部メーカーの機種しか検証が済んでいません。

(配列はメーカーの五十音順)

カシオ(2009年モデル)

XD-GF7350(中国語ネイティブ音声有り)製品情報

XD-SF7300(中国語ネイティブ音声有り)製品情報

  1. メインの中国語辞書は、小学館の『中日辞典第2版』『日中辞典第2版』です。
    XD-GF7350はそれに加えて主に以下の中国語辞書を収録しています。中国語会話集など、その他のコンテンツについて詳しくは収録コンテンツ詳細を参照してください。
  2. 声調の入力方法は、アルファベット+数字。
    慣れた人にはこれが一番速い入力法ですが、初心者にとっては声調と数字を結びつけることがやや難しいかもしれません。
    (例)hǎoを入力するには、hao shiftキー 3
    キーボードに埋め込まれた手書き入力用の小さな液晶に声調符号が表示されますので、初心者の人はそちらを使えばよいでしょう。
  3. 中国語手書き入力あり。ピンインがわからなければ漢字を書いて探せます。
  4. 音声再生機能あり。パソコンで教材付属のCDを変換して電子辞書に転送して再生できます。但し変換と電子辞書への転送は専用ソフト(Windows用)を使用してCDから変換しなくてはなりません(既存のMP3は使えません)。
  5. テキストファイル表示機能あり。但し電子辞書への転送は専用ソフト(Windows用)を使用しなければなりません。
    中国語テキストファイルの表示OK。対応文字コードはGB2310またはGB18030です。中国語と日本語との混在した文書や声調符号つきピンインも表示できますが、声調符号つきピンインがやや見にくいのが残念です。
  6. テキストファイルの単語をジャンプ機能で辞書引き可能。
  7. 中国語ネイティブ音声のない部分についてはTTS(合成音声)で文単位で読み上げます。テキストファイルの中国語もTTSで文単位で読み上げられます。読み上げの速度は5段階の調節が可能です。

カシオの中国向けモデル

中国語による製品情報

キヤノン(2008年モデル・2009年モデル)

wordtank V923(中国語ネイティブ音声有り、2009年モデル)製品情報

wordtank V823(中国語ネイティブ音声有り、2009年モデル)製品情報

wordtank V903(中国語ネイティブ音声有り、2008年モデル)製品情報

(注)新モデルは以前のモデルの辞書数を増やす形で発売されることが多いのですが、2008年のモデルV903に入っていた中国語の方言会話集が、2009年のモデルのV923やV823には入っていないなど、一部辞書が差し替えられていますので2年分掲載します。
参考:キヤノン「辞書で選ぶ 中国語系」

  1. メインの中国語辞書は、講談社の『中日辞典第2版』『日中辞典』です。
    wordtank V923はそれに加えて主に以下の中国語辞書を収録しています。中国語会話集など、その他のコンテンツについて詳しくは収録辞書一覧を参照してください。
  2. 声調の入力はアルファベット+四声キー
    キーボードに声調入力専用キーがあって、そのキーを押す度に1声→2声→3声→4声と表示が変わっていきます。専用キーがあるため声調入力の方法が直感的にわかりやすいですが、慣れてくると少々面倒です。また声調符号を付ける母音のすぐ後で四声キーを押さねばなりません。
    (例)hǎoを入力するには、ha 四声キーを3回押す o
    (うっかりoの後に四声キーを押すと正しい検索結果が出ません)
  3. 中国語手書き入力あり。ピンインがわからなければ漢字を書いて探せます。
  4. 中国語による複数辞書検索や例文検索ができます。
  5. ジャンプ機能が秀逸です。
  6. 録音機能あり。自分の声を録音して中国語ネイティブ発音と比較して聞くことができます。
  7. 3機種ともMP3再生機能あり。教材付属のCDをMP3に変換したものや、MP3で配信されているポッドキャストをSDカード(別売)に入れて電子辞書で再生することができます。音声を再生しながら辞書を引くこともできます。
    但し、MP3変換ソフトは自分で用意します。また、MP3をSDカードに入れるために別途メモリカードリーダ&ライタ等が必要です。
  8. 2009年モデルのV923とV823にはテキストファイル表示機能があります。中国語テキストファイルの表示OK。対応文字コードはGB2310です。私がテストした範囲では中国語と日本語との混在した文書や声調符号つきピンインも表示できます。
  9. テキストファイルの単語をジャンプ機能で辞書引き可能。
  10. 中国語ネイティブ音声のない部分については、単語単位で辞書の見出し語の音声を呼び出します。テキストファイルの中国語も単語単位で辞書の見出し語の音声を呼び出します。
  11. 2008年モデルのV903は、ソフトウェア(Windows用)をインストールすることにより、パソコンに電子辞書をつないで検索することができます。詳しくは、キヤノンのUSB辞書のページを見てください。

シャープ(2008年モデル)

PW-LT220(中国語ネイティブ音声有り)製品情報

  1. メインの中国語辞書は小学館の『中日辞典第2版』『日中辞典第2版』です。それに加えて、入門〜初級者向けの朝日出版社『はじめての中国語学習辞典』を収録しています。中国語会話集など、その他のコンテンツについて詳しくはコンテンツを参照してください。
  2. 声調の入力は母音を複数回打つ方法。
    aを1回タイプすると→a
    aを2回タイプすると→ā
    aを3回タイプすると→á
    aを4回タイプすると→ǎ
    aを5回タイプすると→à
    打鍵回数が多くなるのが些か面倒ですが、同じキーを何度も打つ携帯電話の文字入力方式に慣れている世代にとっては苦にならないかもしれません。
    (例)hǎoを入力するには、haaaao
  3. 中国語手書き入力あり。ピンインがわからなければ漢字を書いて探せます。
  4. 音声と同期してテキストを反転表示する「字幕リスニング」機能に対応した中国語会話集を収録しています。
  5. MP3再生機能あり。教材付属のCDをMP3に変換したものや、MP3で配信されているポッドキャストをSDカード(別売)に入れて電子辞書で再生することができます。
    MP3変換ソフトは自分で用意するかメーカー配布のWindows用ソフトを使用します。
    MP3をSDカードに入れるために別途メモリカードリーダ&ライタ等が必要です。
  6. テキストファイル表示機能はありますが、残念ながら中国語には未対応です。

SII(セイコーインスツル)(2008年モデル・2009年モデル)

SR-G9001(2008年モデル) 製品情報

SR-G10001(2009年モデル) 製品情報

SL901X(2009年の大学生協専用モデル)

中国語辞書カード DC-A07CN(中国語ネイティブ音声有り)製品情報

以下の検証はSR-G9001+中国語辞書カードDC-A07CNで行いました。

  1. SR-G9001・SR-G10001・SL901Xはいずれも英語電子辞書ですが、別売の中国語辞書カードを加えることにより中国語電子辞書としても使用できます。中国語辞書カードのメインの中国語辞書は小学館の『中日辞典第2版』『日中辞典第2版』です。
  2. 声調の入力は、音節を入力し終わった後に、ー(ハイフン)キーを声調の数だけ押します。声調符号を付ける位置は電子辞書が判断します。
    (例)hǎoを入力するには、hao ー(ハイフン)キーを3回押す 
  3. 無気音と有気音・nとngなど、日本語話者が区別しにくい音を同じものと見なして検索する機能があります。例えばboと入力してスペルキーを押すとpoも一緒に検索してきます。
  4. このページで紹介した機種の中では、キーボードが一番打ちやすく、また液晶もTFTを使っていてとても見やすいです。
  5. MP3再生機能あり。教材付属のCDをMP3に変換したものや、MP3で配信されているポッドキャストを電子辞書に転送して再生することができます。
    MP3変換ソフトは自分で用意します。
  6. テキストファイル表示機能あり。中国語テキストファイルOK。対応文字コードはUnicode(UTF-16)ですので、中国語と日本語との混在した文書や声調符号つきピンインも表示できます。
  7. テキストファイルの単語をジャンプ機能で辞書引き可能。
  8. テキストファイルと音声ファイルに同じファイル名をつけ、1つのフォルダに入れておくと、テキストファイルを見ながら音声を呼び出せます。
  9. ユーザーがオリジナルの辞書やドリル(選択問題)を作って電子辞書に転送できる機能があります。中国語にも対応しています。音声やモノクロ画像を辞書やドリルに添付することもできます。Excelでデータを作成し、専用ソフト(Windows用)で変換した上で電子辞書に転送します。
    参考:SII「サンプルコンテンツ集:オリジナル電子辞書を作ろう!」
  10. SR-G9001・SR-G10001は、ソフトウェア(Windows用)をインストールすると、パソコンに接続してパソコンから電子辞書を引けます。300字までという字数制限はありますが、辞書の内容をパソコン上のワープロソフトの書類にコピー&ペーストすることもできます。
    本体に収められている英語辞書は見出し語検索に加えて例文検索もできます。中国語辞書カードについては、電子辞書本体では見出し語検索も中国語の例文検索もできますが、パソコンからの検索では見出し語検索のみです。残念ながらパソコンからは中国語の例文検索はできません。
    ソフトウェアのインストール方法など、この機能について詳しくは、SIIのPASORAMA詳細ページを参照してください。

どれを買うか迷った時のヒント

各機種は本当に一長一短です。どの機能を重視するかによって選択が変わってきます。迷った時のヒントを少し書いておきます。
(注)同じメーカーでも機種によって機能の違いがあります。機種名が書いてあるのはその機種独自の機能ということです。

電子辞書を便利に使うために

電子辞書ならではの使い方をいくつか紹介します。

聞き取りをしていて一部しか聞き取れなかった単語がある時

(例)で終わる単語とまではわかったのだが、の前の音がうまく聞き取れない。
→ワイルドカード検索を使います(全機種対応)。
(キヤノン・SII)
(カシオ・シャープ)
と入力して検索します。
なお、キヤノンは漢字のワイルドカード検索にも対応しています。

ある単語を引いたら、説明や例文の中にまたわからない単語が出てきた時

→ジャンプ機能を使って更に辞書を引きます(全機種対応)。
ジャンプキーを押してから、カーソルキーで引きたい単語まで移動して決定ボタンを押します(カシオ・シャープ・SII)。
引きたい単語をスタイラスペンで画面を直接なぞってタップします(キヤノン)。

収録されている複数の中国語辞書を一気に検索したい時

→複数辞書検索を使います(キヤノン・シャープ・SII)。

その単語が含まれている例文を全部抽出したい時

(例)辞書に似た例文があったらそれを参考にして翻訳の宿題ができるかも?
→例文検索を使います(キヤノンとSII)。
例文検索では単語を1つだけを検索することも勿論できますが、複数の単語を含むand検索もできます。例えば、一&就と入れると、“一”“就”を含んだ例文を検索してきます。但し、出現順は考慮しておらず、“一”が先に出て“就”が後に出てくる例も、“就”が先に出て“一”が後に出てくる例も検索されてきてしまいます。語順が大きな意味を持つ中国語ではこれは如何なものかと思いますが、現状ではこうです。


2009年4月27日

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