中文分野の参考文献の探し方

準備

どこから手をつけていいかわからない時

百科事典の記述は必要最小限ですが情報がコンパクトにまとまっています。中国関係の項目であれば平凡社の『世界大百科事典』がお勧めです。

中国学に関する調べものの仕方について書かれた本に
潘樹広著・松岡栄志編訳『中国学レファレンス事典』(凱風社 1988年)
があります。中国学に関する調べものの仕方をQ&Aに仕立ててあります。自分の調べようと思っている問題と同じものあるいは似通ったものがあったら、たいへん参考になります。

教員に相談するのはまあ当たり前として、案外盲点なのが図書館のレファレンスサービスの利用です。図書館の司書さんは本の貸し借りの手続きだけにいるのではありません。みなさんの調べ物の手助けもしてくれます。レファレンスサービスとは実際にどんなものかは、国立国会図書館のレファレンス協同データベースを一度見てみてください。司書さんが利用者の質問に対してどんなふうに調べていったのかがわかります。

インターネットの発達にともない、Webを使って参考文献を探すこともできるようになりました。かといってやみくもに探しても目指す情報にはなかなか到達しませんし、Webは誰でも情報発信ができますから、情報が誤っていたり偏っていたりすることもよくありますので、注意しなければなりません。
中国学に関するパソコンの利用については、漢字文献情報処理研究会『電脳中国学II』(好文出版 2001年)が必読文献です。同書「第3章 メールとインターネット」の中にある「インターネット中国学への入り口」(110頁〜)をぜひ読んでください。

キーワードをメモする

自分の調べようとしている問題ついて、検索のためにいくつかのキーワードを抜き出します。もし関連する人名・書名などの固有名詞があれば必ずメモしておきます。固有名詞をキーワードとして検索すると比較的見つかりやすいからです。

なお中国学に役立つリンク集を作ってありますので、そちらも参照してください。


単行本を探す

文献目録を使って探す

人の手によって分野別に整理されているので、自分が調べようとする分野に関してざっと概観することができます。

以下の2冊は年に1回発行されるものです。

Webを使って探す

多くの大学図書館・公立図書館がWeb上で蔵書目録(OPAC)を公開しています。先ほどメモしたキーワードを使って検索してみましょう。
但し、全ての蔵書の入力が終わっているわけではありません。OPACで検索して出てこなかったからといて、その本が所蔵されていないということにはなりません。

OPAC検索のTips:人名・地名など固有名詞をキーワードに調べる時は、検索語の後ろに*を付けて前方一致検索をした方が、ヒット率が上がります。
(例)小川環樹*

国立国会図書館
日本最大の図書館。
国会図書館のアジア言語OPAC
中国語の書籍が検索できる。
Webcat
日本の大学図書館の蔵書を横断的に検索できる。
Webcat英語版
上記のWebcatの英語版、中国語で書かれた書籍を探すときはこちらを使うこと。
NACSIS Webcat Plus
上記のWebcatの拡張版。従来の単語のよる検索だけではなく、本の内容を文章を使って検索できる(連想検索)。現時点では日本語の書籍にのみ対応。約260万件の検索が可能。1986年以降の発行分については、目次や帯・カバーに書かれた内容の情報も見ることができる。
Googleブック検索
巨大検索エンジンGoogleによる本の中身検索。内容の一部をその場で見ることができる本もある。

本が出版されてから図書館に収蔵されるまでにはどうしても時間差があります。新刊書を調べたい時や、その本が現在でも入手可能かどうか調べるには、以下のWebページを利用すると便利です。

books.or.jp
社団法人日本書籍出版協会によるWebサイト。日本国内で発行され、現在入手可能な図書約62万件を検索できる。
東方書店
中国からの輸入書や日本で出版された中国学に関する書籍のデータベースあり。
紀伊国屋書店
日本のオンライン書店の草分け。店頭在庫を検索できるので、版元品切れでも店頭に在庫があれば購入できて便利。
amazon.co.jp
アメリカ最大のオンライン書店の日本版。
bk1
日本のオンライン書店

国会図書館のアジア言語OPACやWebcat英語版でも中国語の書籍は検索できますが、データ量から言えば何と言っても中国のWebサイトもチェックすべきでしょう。
なお、パソコンで中国語を表示したり入力したりする方法については、パソコンで中国語を使うにはを参照してください。

中国国家图书馆(簡体字中国語)
文献検索に直接入るにはこちらへ。最初ログイン画面が出てくるが、IDやパスワード欄を空白にしたまま「匿名登録」ボタンをクリックすれば検索画面に入ることができる。
全國圖書書目資訊網(繁体字中国語)
台湾の蔵書検索
香港中文大學大學圖書館系統目錄(繁体字中国語)
香港の大学図書館の蔵書検索。

論文を探す

文献目録で探す

『東洋学文献類目』
京都大学人文科学研究所が年に1回発行する文献目録。大部な本なので調べるのがたいへんだったが、Webで検索できるようになった(CHINA3)。
なお京大人文研は多数の中文書を所蔵していることで有名。所属する大学の図書館の紹介状があれば利用できる。利用案内はこちら
『日本中国学会報』
日本中国学会が年1回発行する論文集。「学界展望」に年度ごとの著書・論文などを分野別にまとめてある。2004年度以降の「学会展望」は日本中国学会のWebサイトで読むことができる。

Webで探す

国会図書館OAPC
 以前からあった蔵書検索に加えて、雑誌記事索引が使えるようなった。
CHINA3
『東洋学文献類目』のWeb検索版。
CiNii(NII論文情報ナビゲータ)(¥一部有料)
国立情報学研究所による学術情報のデータベース。論文タイトルの検索だけならユーザー登録無しで無料で利用できる。
所属機関がCiNiiと定額利用契約していれば、サイトライセンス個人IDが取れるのでこちらでまず確認を。
Google Scholar
巨大検索エンジンGoogleによる論文検索。
MAGAZINEPLUS日外アソシエーツ)(¥有料)
国内最大級の雑誌論文情報データベース。
中国期刊网(CNKI)(簡体字中国語)(¥有料、一部無料)
1994年以降の中国の学術論文の検索と全文ダウンロードサービスを有償で提供している。
現在公開されているのは、「中国期刊全文数拠庫」(学術雑誌掲載論文のデータベース)「中国優秀博碩士学位論文全文数拠庫」(博士論文・修士論文のデータ ベース)「中国重要報紙全文数拠庫」(新聞記事のデータベース)など。
日本では東方書店が代理店になっており、日本語での説明は東方書店のホームページからCNKIへのリンクをたどると見られる。東方書店のページで「中国学術雑誌全文アーカイブス」と「中国博士・修士学位論文アーカイブス」に関しては、論文タイトルのみの無料検索が可能。

見たい本が自分の大学の図書館になかったらどうする?

調査した結果、自分の課題に関する参考文献があることがわかりました。まずは自分の大学の図書館に所蔵されていないか探します。
なお、古い本の中にはまだOPACに登録されていない場合もあります。OPACで出てこないからと言って、その本が所蔵されていないとは言い切れません。

大阪府立大学図書館OPAC
(合併に伴い大阪女子大学の蔵書は大阪府立大学図書館に収蔵されました)

自分の大学の図書館でもし見つからなかったら、そこであきらめてはいけません。以下のような方法があります。

相互貸借制度を利用する

各図書館の間には相互貸借制度があり、自分のところにない書籍を他の図書館から借りることができます。自分の大学の図書館になければ相互貸借制度を利用して他の図書館から借りられないか、図書館員に相談してみましょう。
全ての書籍が借りられるわけではありませんが、目指す書籍を所蔵する図書館が遠いところにある場合には便利な制度です。利用には郵送料が必要です。

図書館を通じてコピーを依頼する(文献複写)

読みたい論文が掲載されている雑誌が所蔵されていない場合によく使う方法です。自分の大学の図書館を通じて、その雑誌を所蔵している図書館にコピーを依頼します。利用には郵送料とコピー代が必要です。
なお著作権法の関係で本を1冊まるごとコピーすることは許されていません。

その本や雑誌を所蔵する大学図書館に見に行く

自分の大学の図書館に紹介状を書いてもらい、他大学の図書館へ直接行って資料を探すこともできます。学外者の利用に関しては図書館によって規定が異なりますので、あらかじめよく調べてから行きましょう。一般に貸し出しは不可、館内での閲覧及び本の一部分のコピーのみ可というところが多いようです。

自分が利用できる規模の大きな公立図書館に行く

一般に学術書は大学図書館で探した方が効率が良いのですが、地域の公立図書館の中でも規模の大きいところは学術書を比較的多く所蔵しています。
たとえば大阪府に在住または通学通勤しているのなら大阪府立図書館が使えます(大阪府立図書館の蔵書検索はこちらへ)。
大阪府内の公立図書館の蔵書を横断検索するにはこちらへ
大阪市に在住または通学通勤しているのなら大阪市立図書館が使えます(大阪市立図書館の蔵書検索はこちらへ)。
堺市に在住または通学通勤しているのなら堺市立図書館が使えます(堺市立図書館の蔵書検索はこちらへ)。
最近国会図書館関西分館も開館しました。国会図書館は18歳以上であれば誰でも利用できます。関西分館にはアジア情報室があり、中国語の書籍約48000冊、雑誌約3600タイトル、新聞約330紙をはじめとしてアジアの言語で書かれた資料が多数所蔵されています。


たくさん参考文献が見つかったらどうする?

基本的には発表年度の新しいものから読んでいきます。時を経ても価値が変わらない名著ももちろんありますが、以前の研究を継承し発展させるにしろ批判するにしろ、新しい研究はそれ以前の研究を踏まえた上で書かれているはずだからです。


本文だけでなく、注や参考文献も見よう!

参考文献が見つかったら、本文を読むだけではなく、必ず注や参考文献一覧に目を通しましょう。注や参考文献一覧は一般に巻末あるいは章末に付けられています。
多くの研究者が参考文献として挙げている著書や論文は、その分野では評価が高い或いは注目される研究と考えられます。
また、注や参考文献一覧を手がかりにすれば、芋づる式に効率良く参考文献を探すことができます。


論文・レポートの制作前に見ておきたいWebページ

中国学系情報検索入門
虎渓之橋の中にある。中国学系の大学1年生〜4年生を対象にしている。Contentsの部分は卒論やレポート制作の前に目を通しておきたい。appendixにあるリンク集も必見。

2008年2月6日

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